結果は勝利に終わる。だが達成感がまるでない。してやったり感がまるでない。寂しい気持ちだけが残る。ユーノスに対しても自分に対しても。もう一度インドに来た目的を考える。インド人になる為だ。インド人の生活の在り方を考える。貧富の差が激しい国である。下着姿で腕がない人とブランド物に包まれたオシャレな人が共存する国である。お城のような家に住む集落とゴミで作られた集落が隣り合わせの国である。生きていく為には手段を選んでいられない。インドに着いてすぐ感じたことだ。その時に決めたことを思い出す。嫌な言い方だがお金をいっぱい使おうと決めたのだ。特に貧しい地域で。観光で来ている僕が唯一出来る事だ。それ以外はクソの役にも立たない。特に貧しいインド人が一観光客に求めている事は楽しい思い出よりお金の方が遥かに大事でそれが現実なのだ。それを感じて決めた事だった。僕はユーノスの家に向かう。実はユーノスに逢ってすぐ出発前に自宅に連れて行かれ家族を紹介してもらい「帰って来たら皆で飯でも食おうね」、裏を読むなら「帰って来たら皆に飯奢ってね」と話をしていたのだ。タクシーに行き先を説明する。ちゃんと憶えているか心配だったが無事到着。ユーノスの車はまだない。きっと僕を捜しているのだろう。死ぬほど怖い思いをしたのに罪悪感が湧いてくる。ユーノスの奥さんに「はぐれたから」と約束の金額に上乗せして渡す。奥さんや子供達は外国人なれているのだろう。無邪気な笑顔だ。
アウランガバードを探索する。ここは貧しい土地だが笑顔に溢れている。観光客が珍しいのか、インドでは僕が格好良くみえるのか、皆ジロジロ嘗め回すように見ていく。子供に関して言えば手を振ってくる。愛想よくそれに応える。ちょっとしたスター気分で気持ちが良い。
レストランでカレーとタンドリーチキンを頼む。マンゴーラッシーも頼む。もうすぐインドの旅も終わる。料理の味で不満はなかった。元々雑食で大抵の物なら「うまい、うまい」と言って食べる。悪く言えば味覚音痴なだけだが。
これからまたバスに乗りムンバイに戻る。チケットは買ってある。もちろんデラックスを。防寒対策に靴下とストールを購入する。蚊取り線香もまだ残っている。路上で売っている豆を買う。ビールによく合う味だ。これで準備は完璧だ。だがバス予定の時間を過ぎてもまだ来ない。今回ばかりはのんびりしていられない。飛行機の時間が絡んでくるからだ。このフライトに間に合わなければ仕事にも支障が来る。まずい。バスの出発は2時間遅れで僕の計算ではギリギリ間に合う。足掻いてもしょうがないのでバスを楽しむことにする。しかしバスは楽しくない。理由は行きと同じである。結局空港に着いたのはもう搭乗手続きが始まってる頃。これが成田なら慌てるか諦めているかってところ。でもここはインド。予想通り飛行機も遅れている。これこそインド。
僕はインドで多くのことを学んだ。只サロンワークには活かせる気がしない。インドってどう?って聞かれたらこう答えている。
・ カレーがカレー、これは冗談。只飯はうまい。
・ バスは最高。特に長距離バス。
・ あの良さは行かなきゃ解らないですよ、と。
ここに記載したものは僕が体験したごく一部でしかない。僕が体験したのもインドのごく一部でしかない。インドに行った人は、また行きたくなるか、もう2度と行きたくなるか二極化するらしい。僕は前者である。もっと知りたい。今度は時間を掛けてのんびりと。結論から行くとインド人にはなれなかった。余りにも環境が違い過ぎたし、普通に考えてなれる訳がない。只もっと知りたいと思う。これを見て少しでもインドに興味を持ってくれる人がいれば嬉しい。誤解を招く表現も合ったかも知れないがすごく楽しいところだから。
◆おしまい◆
iPhoneからの投稿
2012
07Dec